派遣会社でキャリアコンサルタントとして外国人材の支援を行いながら、自身の行政書士事務所でもビザ手続きやキャリア支援を手がける梁様に外国人雇用労務士(以下、外労士)の知識を学ぶ意義についてお伺いしました。
▽この記事では下記のことがわかります。
✅「外国人が日本で安心して働ける社会をつくりたい」思いの原点
✅外労士の取得で起きた、周囲の変化
✅外労士と行政書士のダブルライセンスで活躍する方法
ーまずは、ご職業を教えてください。
現在はダブルワークをしています。1つは派遣会社でキャリアコンサルタントとして外国人材のサポートを行っており、もう1つは自分の行政書士事務所で、外国人材向けのキャリア支援とビザ手続きを行っています。
ーどのような経緯で現在のご職業につかれたのですか。
私は香港出身で、日本に来て14年目になります。
もともとは香港で、日本人向けの人材紹介や、日系企業の現地採用支援に携わっていました。
その後、日本に移住することになったのですが、そのときに「外国人が日本で活躍するためのサポートをしたい」と思うようになりました。そこから、約10年にわたり、外国人向けの人材紹介に関わってきました。
ー日本で外国人のキャリア支援を行うようになったきっかけはありますか。
日本に来て驚いたのは、外国人が日本に在留し、働くために必要な知識を得る機会がとても少ないことでした。
例えば、在留資格や入管法の知識は、日本に住む外国人材にとって非常に重要です。ところが、仕事で出会う外国人材の方の中には、そうした情報を十分に持っていない方もたくさんいらっしゃいました。
「入管法や在留資格に関する情報が、本当に必要としている人に届いていない。」
そう感じてからは、外国人向けの情報発信にも力を入れるようになりました。現在はSNSでは8,500名以上の方にフォローしていただいています。
ー異国の地で、ご自身の立場から見えた課題に取り組まれているのですね。
はい。私自身も、在留資格の申請や変更で苦労した経験がありますし、制度改定のたびに将来への不安を感じることがあります。そういった経験が、「外国人が日本で安心して働ける社会をつくりたい」という思いの原点になっていると思います。
ー外労士の取得を決意した理由を教えてください。
何かの記事で外労士のことを知ったのがきっかけです。最初は単純に「名前がかっこいい」という理由で受験を決めたのですが、結果としてとてもよい決断だったと思います。
ー外労士を取得してよかったことを教えてください。
外労士を取得する以前から、〈技術・人文知識・国際業務〉に関する知識はある程度ありました。
一方で、法務知識や〈技人国〉以外の在留資格に関する知識にはあまり自信がありませんでした。外労士の学習を通じて、制度の全体像を体系的に学べたことは非常によかったと思います。
また、「外労士」と名乗るようになってから、クライアントからの信頼感が大きく変わりました。「資格があるだけで、ここまで受け取られ方が違うのか」と驚いたほどです。
この経験は、その後に行政書士資格の取得を決断するきっかけにもなりました。
次のキャリアにつながる知識を身に付けられたという意味でも、外労士を取得してよかったと感じています。
ー試験対策として、どのようなことをされましたか。
基本は耳で学ぶスタイルでした。
私はテレワーク中心で働いているので、家にいる間は直前対策講座をずっと流していました。
ただ、〈特定技能〉のように、仕事で使うことが少ない分野については、動画だけでは補いきれない部分もあるため、テキストを読み込んでいました。
感覚としては、9割が耳からの学習で、残り1割がテキスト学習だったと思います。
ー試験当日の様子はいかがでしたか。
外労士を受験したのは2年前ですが、その日のことは今でもよく覚えています。
私は日本語ネイティブではないこともあり、かなり緊張していたのですが、想像していたよりも問題の文字数が多くて、よけいにびっくりしてしまい…。
最初は読むだけでも精一杯で、かなりドキドキしながら進めました。ただ、解いていくうちに少しずつ慣れていき、最終的には何とか全問回答できました。
今後受験される方も、時間配分をしっかり意識すれば、しっかり点数が取れると思います。
ー現在は外労士をどのように活用していますか。
主にSNSのプロフィールに記載し、信頼性のアピールに活用しています。実際に、セミナーの集客につながったり、SNSアカウントのフォロワーが増えたりと、数字にも表れています。
私の場合、外労士を取得する前は行政書士などの他資格も持っていなかったため、クライアントから「行政書士ではないのに、なぜビザの話をするのか」と見られてしまうこともありました。
外労士を取得してからは、在留資格やキャリアに関するアドバイスへの信憑性が増し、そうした不安を持たれることが少なくなりました。
現在は、外労士と行政書士の両方の知識を活かして、外国人材向けのセミナーを行っています。
たとえば、「〈技人国〉ではできない仕事」「制度上の注意点」といった実務的な話に加えて、制度知識を踏まえたキャリアプランニングのお話もしています。
こうした活動を続けてきたことで、行政書士事務所を立ち上げる際にもよいスタートを切ることができました。現在は約200件を超える問い合わせをいただいています。
外労士の取得が具体的なキャリアにつながった実感があります。
ーやはり、外国人雇用の知識の証明があるとクライアントからの印象が大きく違うのですね。
そう思います。
さらに言えば、外国人材本人からの信頼だけでなく、外国人材を雇用する企業からの信頼も得やすくなります。
例えば以前、外国人経営者の方が日本で外国人材を採用する際に、「採用候補者に入社を前向きに考えてもらえるよう、一緒に話をしてほしい」という依頼を受けたことがありました。
候補者である外国人材側としては、自分が応募した企業とはいえ、「本当に信頼してよいのか」という不安があったのだと思います。
そこで私は、「この会社では在留資格のサポートができる」「キャリア面でも支援が受けられる」といった安心材料を、応募者の方にお伝えしました。
企業からの信頼に応える形で、最終的には外国人材の企業に対する信頼感を育むことができた、印象深い経験でした。
ー日本で働く外国人材は企業を選ぶ際に、”安心感”や”信頼感”を重視するんですね。その他には、どんなことが重視されますか。
そのほかでは、「この企業で自分のキャリアを築いていけるか」という点を重視する傾向があります。
日本企業では、いわゆるジェネラリスト型の採用を行う場合が多いですよね。入社後に様々な部署や役割を経験し、30代から40代になってから専門性が定まっていくようなケースも一般的です。
一方、海外ではジョブ型採用が主流です。例えば大学でマーケティングを学んだ人は、卒業後すぐにマーケティング職に就くことができます。
そのため、外国人材の中には
「日本の企業では、効率よくキャリアが積めないのではないか」
と感じる方もいます。
ー日本の採用の仕組みが、外国人材のイメージするキャリア形成と一致しないこともあるのですね。
そうですね。
ただ、ジョブ型採用が中心の環境では、担当領域以外の仕事に関わる機会が少ないこともあります。
その点、日本のようなジェネラリスト型の採用では、学歴や経験だけに縛られず、職業選択の幅を広げやすい面があります。キャリアを“広げる”という意味では、メリットもあると思います。
自分に向いている仕事がまだ明確でない場合には、日本企業に入社して、適正を見ながらさまざまな方向で育成してもらえることもあります。そうした働き方も、決して悪くないと思います。
ー最後に外労士の取得を検討されている方に向けて、メッセージをお願いします。
外労士を取得すると、外国人材からの信頼を得やすくなりますし、制度とキャリアの両面から相談に乗れるようになるため、自分自身にとっても大きな強みになると思います。
また、今後の外国人雇用の現場では、ビザの厳格化も進み、今後は外国人材の奪い合いが発生してくることも予想されます。制度理解の重要性がますます高まっていくはずです。
企業間の差別化という面でも、外労士の取得は役立つのではないでしょうか。
外国人雇用に関わる仕事をしている方、これから関わっていきたい方にとって、外労士は実務と信頼の両方につながる資格だと思います。
■梁婉鈴様のプロフィールはこちら
香港生まれ。香港大学・香港中文大学大学院卒業後、一橋大学への交換留学を経て、人材紹介会社や企業人事として15年以上、外国籍人材のキャリア支援・採用支援に携わる。現在は行政書士・国家資格キャリアコンサルタントとして、在留資格の取得支援から就職・転職相談まで一貫してサポート。「技術・人文知識・国際業務」をはじめとする就労ビザを専門とし、自身も外国人として日本でキャリアを築いてきた当事者目線が強み。対応言語は日本語・広東語・中国語・英語。
保有資格: 行政書士 / 国家資格キャリアコンサルタント / GCDF / 外国人雇用労務士
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