▼この記事では以下のことが分かります
✅ 日本語教育と健康支援をかけ合わせた“多面的支援”のあり方
✅ 外労士取得の動機と、制度的知識の必要性に気づいた背景
✅ 試験対策に活用した脳科学的アプローチ
✅ 留学生・外国人介護士への就職支援における実務的効果
―外労士資格を知ったきっかけと、取得に至った背景を教えてください。
以前、フランスの専門学校やマーシャル諸島の短期大学で日本語教師をしていたのですが、その中で「言葉の支援だけでは、その人の本当の願いや目標を支えきれない」と感じる瞬間が何度もありました。
特にマーシャル諸島では、乳幼児死亡率の高さという社会課題に直面し、学生の中にはお子さんを亡くしたお母さんもいて、学びたくても心が追いつかず、学習に集中できないという状況を目の当たりにしました。その経験から、「教育の場には、健康や生活全体への理解も不可欠だ」と痛感し、帰国後は思い切って看護大学に進学し、看護師・保健師の資格を取得しました。
ちょうどその頃、日本とインドネシアのEPA(経済連携協定)が始まり、私は1回目の大学時代に専攻したインドネシア語を活かして、大学近くの病院で、来日したインドネシア人看護師候補者の国家試験対策講座を担当させていただきました。日本語で医学知識を学ぶことは非常にハードルが高く、その支援を通して、「言語」「制度」「専門知識」のつながりに深く関心を持つようになりました。
また、日本国内の日本語学校でも教師として、多くの外国人留学生や就労者と向き合う中で、「支援には制度的な理解が欠かせない」と改めて実感する場面が増えました。在留資格や就労制度、支援機関との連携の重要性を日々実感し、その必要性を感じて情報を探し始めたときに、出会ったのが「外国人雇用労務士」という資格でした。
自分のこれまでの経験とスキルを制度の理解と実務に結びつけ、より多角的かつ実践的な支援を行いたいと考え、受験を決意しました。
―日本語教育・健康支援に加えて、「制度的知識」が必要だと感じた理由は?
インドネシアから来日した看護師候補者の支援を行う中で、学習環境や就労環境の背後には、複雑で多層的な制度が存在していることに改めて気づかされました。特に、日本語・医療用語・実務知識という三重の壁に加え、複数の省庁が横断的に関わる制度のもとで支援を受ける外国人候補者に対しては、制度全体を俯瞰して理解し、適切にナビゲートできる支援者の存在が欠かせないと強く実感しました。
こうした教育・健康・現場での支援経験を重ねるなかで、「制度理解」こそが、多様な背景をもつ外国人の可能性と選択肢を広げる“実践的な鍵”であると確信するようになりました。
―具体的な学習方法を教えてください。
試験対策では、最初に公認テキストの目次をスプレッドシートに落とし込み、全体像を俯瞰するところから始めました。そのうえで、各項目について「理解できている」「曖昧である」「よくわからない」といった自己評価を行い、得意分野と苦手分野を可視化しました。
この方法は、日本語学校や大学で行われているプレースメントテスト(学習開始前の自己診断)をヒントに、自分自身に合った学習計画を立てるために活用したものです。自分の理解度を客観的に把握することで、限られた時間の中でも優先順位をつけ、効率的に学習を進めることができました。
さらに、公式ホームページにて公開されているサンプル問題を分析し、公認テキストのどの章からの出題が多いのか、出題文の文字数や選択肢の傾向なども把握しました。その分析結果をもとに、ChatGPTを活用してオリジナルの予想問題を作成しました。
ただし、生成された問題や解答を鵜呑みにすることはせず、必ず公認テキストに立ち返って正確性を確認し、必要に応じて法務省や厚生労働省の公式情報も参照しました。このプロセスを通じて、ただ知識を増やすだけでなく、「正確さ」や「制度理解」の視点も深めることができました。
仕事をしながら限られた時間で学習を進める必要があったため、日々の生活の中で自分の行動を音声で記録し、どのようなときに隙間時間が生まれているか、どのタイミングで集中できるかを分析しました。その記録をChatGPTを活用して振り返ることで、無理なく学習時間を確保できる自分なりのリズムを見つけることができました。生活を可視化し、最適な時間設計を行うことも、合格までの大きな支えとなりました。
また、私は日本語教師として脳科学的な学習アプローチを授業にも取り入れていますが、今回はそれを自分自身の学習にも応用しました。自分の学習スタイルを明確にし、効率よく知識を定着させる方法を選択しました。私は視覚と聴覚の両方を使った情報処理が得意な「オーディオ・ビジュアル型」なので、テキスト内容を自作のPowerPointで図解・整理し、それを使って自分の言葉で説明しながら音読・録音を行いました。骨伝導と空気伝導の両方で自分の声を聴きながら感覚器を刺激し、そのプロセスを動画にしてYouTubeにアップすることで、記憶への定着をより強めることができました。 学んだことを誰かに伝えることが、自分にとって最も深い学びになる。そう実感しながら、最後まで前向きに学習を続けることができました。
―試験当日はいかがでしたか?
オンライン試験は初めてで、正直不安もありました。私の場合は、自宅以外の静かな場所を借りて、Wi-Fi環境を整えて受験しました。
問題の難易度はサンプル問題と同程度で、法務や在留資格に関する設問が多かった印象です。問題集がない分、初学者にはやや難しく感じるかもしれません。
―資格取得後、どのように実務で活かしていますか?
一番大きな変化は、制度的なアドバイスができるようになったことです。たとえば、介護現場で働く外国人が転職したいときに、「契約書のどこを見ればいいか」「どのタイミングなら可能か」といった具体的な支援ができます。
また、外国人介護士さんが転職を希望されたときに、契約書の内容を確認したり、どのタイミングなら転職が可能かを一緒に考えたりできるようになりました。以前は「なんとなく困っているんだろうな」と思っていたことも、今では明確に支援できるようになって、自分の中でも大きな変化を感じています。
日本語学校の進学希望の学生に対しては「ただ学校に行けばいい」ではなく、「その先どうなりたいのか」まで見据えた進路支援をしています。専門学校に行くのか、技人国で働くのか、それとももっと専門性を高めて別の在留資格を目指すのか。そういった進路選択に必要な情報を提供できるのも、外労士の学びがあってこそだと感じています。
―今後の展望や、資格を目指す方へのメッセージをお願いします。
資格を取るだけで終わるのではなく、「得た知識をどう活かして、誰に伝えていくか」が何より大事だと思います。初めて学ぶ制度を人に説明することは簡単ではないですが、自分が声をかけたことで「日本に来てよかった」と思ってもらえるなら、それだけで大きな価値がありますよね。
今この資格に興味を持ってくださっている方や、まさに勉強中の方にお伝えしたいのは、「資格を取ることがゴールではない」ということです。得た知識をどう活かし、どう伝えていくかが本当に大事だと思います。
特に外国人の方と関わるとき、自分の言葉や行動がその人の日本での印象、ひいては人生に大きな影響を与えることもあると思います。ですから、恐れずに一歩を踏み出して、自分の学びを周囲に還元していってほしいです。この資格に興味を持ったその気持ちがすでに素晴らしいことですので、一緒に学び合い、支え合っていける仲間が増えていくことを心から願っています。
星様、ありがとうございました。
日本語教師としてキャリアを積みながら、保健師、外労士と次々に活動の幅を広げる星様の姿勢は、外国人材の支援に関わる多くの方々の参考になるでしょう。
▼記事のまとめ
✅ 合格のポイント
・制度的な知識への危機感が受験の原動力に
・公認テキストで学んだ内容をPowerPointでビジュアルにまとめることでアウトプット
・直前対策講座の併用で効率的に学習
✅ 実務での活用例
・外国人介護士の転職相談への具体的なアドバイス
・日本語学校卒業後まで見据えたキャリアステップの提案
・「言葉」「健康」「制度」の三軸で“多面的な支援”を実践中
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